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SHURE SE846のリケーブル

イヤホンのリケーブル

 SHURE SE846を始めとする高級イヤホンでは、イヤホン本体とケーブルはコネクタで分離可能な構造になっていて、ケーブルのみを交換できる構造になっています。これ自身は、元々イヤホンのトラブルで一番多いのがケーブル断線等のケーブルに関するもので、そこをケーブルのみの交換で対応出来るようにするものでした。

 しかしながら、現在のイヤホン・コンシューマ市場では「リケーブル」といって、ケーブルを積極的に換えることで、より高音質を獲得する手法として、様々な「リケーブル」用のケーブルが販売されています。SHURE SE846もケーブルが分離できる構造になっていますが、この本体とケーブルのコネクタ部分が「mmcx(エムエムシーエックス)」と呼ばれる規格のコネクタで、このコネクタに対応していれば、SHUREが提供する純正品以外でも取付可能です。

 「リケーブル」による高音質化は、元々はケーブルに使用される線材の変化による効果でしたが、現在ではもう1つ別の意味での高音質効果があります。それが、いわゆる「バランス接続」というものです。

 バランス接続とアンバランス接続

 イヤホンを駆動している電気なので、+(プラス)とー(マイナス)があって、それを接続すると音の波(空気の振動)を電気信号に変換した電気の波がケーブルを伝わってイヤホンのドライバで音に変換されて、音がドライバから発せられます。

 一般的なイヤホンのコネクタは「3.5mm3極」になっています(iPhoneはリモコン付でリモコン操作信号が加わるのでコネクタが4極になっていますが、音声信号用としてはやはり3極しか使っていません)。イヤホンはR側/L側2つのドライバがあるので、それぞれに+、ーを取ると、本来、4極必要ですが、ー側をR側/L側で共通化することで3極になっています。これが「アンバランス接続」と呼ばれるもので、一般的なイヤホン・ヘッドホンはこれになっています。これは、自動車の配線でマイナス側の接続をボディーアースに接続(車体本体の金属部分をマイナス配線として利用している)するのと同じような考え方で、マイナス側を共通にすることで配線長を節約することが目的です。これに対して、「バランス接続」はマイナス側もR側/L側も別々になっており、4極になります。

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 「バランス接続」のメリットは「アンバランス接続」において発生する「クロストーク」という現象を防止することです。ドライバを駆動する回路は+/ー配線でループになっていますが、「アンバランス接続」の場合には、ー配線を共有することで、このループがR側とL側が一部くっついた状態になっています。このときに、片方のループに音声信号(電圧変動)を流すと、反対側に誘導起電力が発生します。この現象は、片方の信号がもう片方に漏れ出すような現象なので「クロストーク」と呼ばれます。「バランス接続」の場合には、左右のループは完全に独立しているので「クロストーク」は原理的に発生しません。これによって、「左右のセパレーションが良くなる」効果があります。

 バランス接続:逆位相信号による能率アップ

 「バランス接続」によるメリットは「クロストーク」防止だけではありません。より本質的な「バランス接続」の機能は、R側/L側それぞれで+側から正相信号を、ー側から逆相信号を送出して、ドライバ側で逆相信号のみ正相に戻してから信号を重複させることです。これにより、(1)途中で外乱ノイズが印加しても、ドライバ側での信号重複時に片方のみ相を反転するのでノイズ信号は打ち消し合い除去される (2)ドライバ側で信号を重複することで信号強度は2倍になる、ことになり、「アンバランス接続」に比べて、信号伝達能率がアップします。体感的にはよりメリハリのある音に感じることができます。

 「バランス接続」を実現するためには、プレイヤーが「バランス接続」に対応することが必要です。そして、「バランス接続」に対応したケーブルが必要です。イヤホン側は特に「バランス接続」に対応している必要はありません。私が持っている、プレイヤー(dap)のAK70は2.5mmバランス接続に対応しているので、SHURE SE846も「バランス接続」用のケーブルにリケーブルしています。「バランス接続」できるプレイヤーとリケーブルできるイヤホンを持っているのであれば、是非、「バランス接続」試してみて下さい。

おすすめのリケーブル

 と、いうわけで、SHURE SE846でのおすすめのリケーブルについて、若干紹介させてもらおうと思います。とはいえ、mmcxコネクタのバランスケーブルは結構たくさんのメーカーから商品化されています。ただ、定番と呼べるものはあるので、私が実際に試した部分も含めて紹介したいと思います。が、あくまで個人的な感想です。

beat audio supernova

 高品質リケーブルの定番といえば、やはり、beat audio社でしょうか?その中でも3兄弟とも言える定番商品の1つ目が、supernovaです。

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 高純度銅線胴体に銀メッキを施した導線を使用しており、高純度銅線による全域の音質改善と銀メッキによる高音域の煌びやかを感じることができます。残りの2種類もそうですが、beat audioのケーブルは、リケーブルによる音質の変化をはっきり感じることができます。

beat audio vermillon

  こちらは銅線オンリーですが、特殊なミネラルを添加しているそうです。ちなみに特徴的な赤色(名前の由来でもありますが)は被覆の色で線そのものの色ではありません。銅線なので、全域の音質改善が感じられますが、supernova以上に全域にパワフルさ・メリハリが加わる感じです。

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beat audio signal

 

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  こちらは銀線です。細い銀線をたくさんより合せて作っているそうです。これを黒い被覆で覆ったケーブルで、見た目もシックでかつしなやかなケーブルです。銀線なので、vermillionに比べるとsupernovaに近い、煌びやかさかと思いきや、vermillion的な全域改善なのでちょっと不思議です。とはいえ、vermillionとは傾向は異なり、より繊細さが加わるような感じです。ちょっと変わり方が地味かも知れません。

結局、どれがおすすめなのか?

 この3つはどれも使ったことがありますが、この3つから選ぶのであれば、私はvermillionがいいかと思います。全域に渡り力強さが加わる感じがいいです。ですが、私は現状ではこの3本のどれも使っていません。音質改善という意味では、どれもそれないに満足させてくれるのですが、やはり取り回しがよくありません。特に、supernovaは結構ケーブルが硬いので、取り回しに苦労します。また、このシリーズはイヤホン側は形状保持ワイヤー入りではなくて、始めからSHURE掛けのために屈曲しているタイプですが、supernovaの場合、ケーブル側のクセが強くて、イヤホンが持って行かれてしまう感覚でした。使っていると徐々にイヤホンのポジションがずれて来てしまい、どうしてもなじめませんでした。vermillionやsignalはsupernovaほどの硬さはないので、さすがにイヤホンが持って行かれることはないですが、vermillionはケーブルは柔らかいといえば柔らかいのですが、逆に収納時のケーブル巻き癖がついてしまい、使用時にケーブルが途中でくるくる巻いてしまうのが取れなくて、取り回しがすっきりいきません。signalもvermillionに近い状態で、vermillionよりはクセはつきにくいですが、やはり巻き癖は残ってしまいます。

 ポータブルで使うイヤホンとしては、音質改善よりも取り回しが良くてストレス無く使えることがより大切だと、私は考えています。beat audio3兄弟はいずれもケーブル外装を被覆で覆っているタイプですが、このタイプはどうしてもケーブルにコシが出てしまい、巻き癖が残ってしまいます。そういう意味では、JH-AUDIOのロージーやロクサーヌⅡに付属していたケーブル(moon audio製)は非常にしなやかで、イヤホンを装着して取り回したときに、ケーブルが自重で垂れ下がり、巻き癖とかは一切発生しません。これらのケーブルは外装を被覆では覆われていないので、そういう違いが発生してしまうのだと思います。

 今、使っているケーブルはそういう観点で選んだものですが、詳しくはまた別途、紹介したいと思います。